2017/12/31 (日)

THE BEST & THE WORST OF 2017


2017年初見の映像作品を月別に並べるとこうなった。評価はA+からC−までの9段階。

JANUARY
「THE WIND JOURNEYS」B+
「ドント・ブリーズ」A
「ミルピエ」c
「64ロクヨン前篇」b+
「64ロクヨン後篇」b
「裁かれるは善人のみ(リヴァイアサン)」b+
「ハイネケン誘拐の代償」c+
「ラビング」b
「トリプル9」b−
「カルテル・ランド」c
「沈黙」c
「ゴーストバスターズ」a−
「4デイズ・イン・イラク」b−
「ハイエナ・ロード」b+
「ロブスター」c
「ライオン」A

FEBRUARY
「マグニフィセント7」A−
「スティーヴン・キングのシャイニング」B
「スノーデン」A
「ザ・ブリザード」a−
「TOP OF THE LAKE SEASON 1」B+
「ドクター・ストレンジ」A

MARCH
「MANH(A)TTAN SEASON 1」A
「トリプルX」C−
「お嬢さん」C
「ベストセラー」B−
「コクソン」C
「アース」B
「ロスト・バケーション」A−
「キャロル」C
「セデック・バレ」C
「10クローバーフィールド・レーン」A−
「海よりもまだ深く」A−

APRIL
「MANH(A)TTAN SEASON 2」A−
「ムーンライト」B−
「THE LEFTOVERS SEASON 1」A+
「HELL OR HIGH WATER」A−
「FARGO SEASON 2 #1」C−
「ギリシャに消えた嘘」C
「パッセンジャー」C
「MERCY STREET SEASON 1-1」A−
「セールスマン」A−
「疑惑のチャンピオン」C

MAY
「ニューヨーク眺めのよい部屋」b+
「死霊館エンフィールド事件」b+
「バーニング・オーシャン」a−
「夜に生きる」b
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」B−
「カフェ・ソサエティ」A−

JUNE
「パトリオット・デイ」A−
「ハクソー・リッジ」B−

JULY
「メッセージ」A
「ローガン」C+
「THE LEFTOVERS SEASON 2」A

august
SEPTEMBER
「ダンケルク」B+
「ワンダー・ウーマン」C
「エイリアン・コヴェナント」B

october
NOVEMBER
「ドリーム」C
「DARKEST HOUR」A−
「GO FOR BROKE」C−
「WIND RIVER」A+
「怪盗グルーとミニオン大脱走」B
「マイティソー・バトルロイヤル」A
「ローガン・ラッキー」B
「あゝ、荒野/前編」c+
「あゝ、荒野/後編」C
「マン・ダウン」b

DECEMBER
「コンカッション」B
「アイ・ソー・ザ・ライト」C
「みかんの丘」C
「ゲット・アウト」B
「SW最後のジェダイ」B
「FARGO SEASON 3」A+
「彼女がその名を知らない鳥たち」C−
「AMERICAN HONEY」A
「ビッグ・シック」A



TOP10の映画はこんな具合。
1「WIND RIVER」
2「ドント・ブリーズ」
3「ビッグ・シック」
4「メッセージ」
5「AMERICAN HONEY」
6「ドクター・ストレンジ」
7「スノーデン」
8「ロスト・バケーション」
9「マイティソー・バトルロイヤル」
10「ライオン」
次点「パトリオット・デイ」

ミニシリーズまで入れるとなると、TOP2が「THE LEFTOVERS 1」と「FARGO 3」のタイ。3着が「WIND RIVER」で4着が「MANH(A)TTAN 1」。

表現芸術の醍醐味はもうハリウッドから消えつつある。才能はアメリカのTVに集まっている。2018年は、その傾向がますます強くなるだろうね。

よいお年を。


2017/12/31 (日)

THE BEST & THE WORST OF 2017


2017年初見の映像作品を月別に並べるとこうなった。評価はA+からC−までの9段階。

JANUARY
「THE WIND JOURNEYS」B+
「ドント・ブリーズ」A
「ミルピエ」c
「64ロクヨン前篇」b+
「64ロクヨン後篇」b
「裁かれるは善人のみ(リヴァイアサン)」b+
「ハイネケン誘拐の代償」c+
「ラビング」b
「トリプル9」b−
「カルテル・ランド」c
「沈黙」c
「ゴーストバスターズ」a−
「4デイズ・イン・イラク」b−
「ハイエナ・ロード」b+
「ロブスター」c
「ライオン」A

FEBRUARY
「マグニフィセント7」A−
「スティーヴン・キングのシャイニング」B
「スノーデン」A
「ザ・ブリザード」a−
「TOP OF THE LAKE SEASON 1」B+
「ドクター・ストレンジ」A

MARCH
「MANH(A)TTAN SEASON 1」A
「トリプルX」C−
「お嬢さん」C
「ベストセラー」B−
「コクソン」C
「アース」B
「ロスト・バケーション」A−
「キャロル」C
「セデック・バレ」C
「10クローバーフィールド・レーン」A−
「海よりもまだ深く」A−

APRIL
「MANH(A)TTAN SEASON 2」A−
「ムーンライト」B−
「THE LEFTOVERS SEASON 1」A+
「HELL OR HIGH WATER」A−
「FARGO SEASON 2 #1」C−
「ギリシャに消えた嘘」C
「パッセンジャー」C
「MERCY STREET SEASON 1-1」A−
「セールスマン」A−
「疑惑のチャンピオン」C

MAY
「ニューヨーク眺めのよい部屋」b+
「死霊館エンフィールド事件」b+
「バーニング・オーシャン」a−
「夜に生きる」b
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」B−
「カフェ・ソサエティ」A−

JUNE
「パトリオット・デイ」A−
「ハクソー・リッジ」B−

JULY
「メッセージ」A
「ローガン」C+
「THE LEFTOVERS SEASON 2」A

august
SEPTEMBER
「ダンケルク」B+
「ワンダー・ウーマン」C
「エイリアン・コヴェナント」B

october
NOVEMBER
「ドリーム」C
「DARKEST HOUR」A−
「GO FOR BROKE」C−
「WIND RIVER」A+
「怪盗グルーとミニオン大脱走」B
「マイティソー・バトルロイヤル」A
「ローガン・ラッキー」B
「あゝ、荒野/前編」c+
「あゝ、荒野/後編」C
「マン・ダウン」b

DECEMBER
「コンカッション」B
「アイ・ソー・ザ・ライト」C
「みかんの丘」C
「ゲット・アウト」B
「SW最後のジェダイ」B
「FARGO SEASON 3」A+
「彼女がその名を知らない鳥たち」C−
「AMERICAN HONEY」A
「ビッグ・シック」A



TOP10の映画はこんな具合。
1「WIND RIVER」
2「ドント・ブリーズ」
3「ビッグ・シック」
4「メッセージ」
5「AMERICAN HONEY」
6「ドクター・ストレンジ」
7「スノーデン」
8「ロスト・バケーション」
9「マイティソー・バトルロイヤル」
10「ライオン」
次点「パトリオット・デイ」

ミニシリーズまで入れるとなると、TOP2が「THE LEFTOVERS 1」と「FARGO 3」のタイ。3着が「WIND RIVER」で4着が「MANH(A)TTAN 1」。

表現芸術の醍醐味はもうハリウッドから消えつつある。才能はアメリカのTVに集まっている。2018年は、その傾向がますます強くなるだろうね。

よいお年を。


2017/12/29 (金)

FARGO SEASON 3は何が素晴らしいのか。


脚本が一流で俳優が超一級完璧のアンサンブル。これは日本語吹替え版で見てはいけない。キャリー・クーンやデーヴィッド・シューリスのニュアンスを体得できる日本の役者がいるか?この珠玉のやりとりを日本語に置き換えられるか?無理無理無理。

52分10話を三晩に分けて見たわけです。評価は第一話から順に並べるとこうなる。

A+、A−、B+、A−、A−、A、A、A+、A+、A+。

わかります、この美しい曲線。頭でどーん、がつーんと来て、ちょい落ちたかというところで徐々に盛り返し、最後がどっかーんがつーんの三連打。今、話題のミステリー「屍人荘の殺人」の意表を衝く展開と主役カップルのキャラの掘り下げも面白かったけれど、これも、意外な隠し球がどんどこ出て来て、あれよあれよの大アクションに昇華されていく。いや、すごい。



すごさのトップがキャリーとデーヴィッドとメリー・エリザベス・ウィンステッド。やや落ちてユアン・マクレガーとマイケル・スタールバーグ。脇も粒ぞろい。

キャリーは「ファーゴ」シリーズ伝統の女シェリフ、グロリア・バーグル。夫がゲイの恋人ができて去ってしまい、ローティーンの息子を抱えて、上司の偏見と戦う孤独な捜査官グロリア・バーグル。

デーヴィッドは「ワンダー・ウーマン」で大芝居の悪役をこなしていたが、こちらは、アラン・リックマンの困惑マウスをパロッたようなだらしない中開きの口でどぎつい脅しを繰り出す静かで強烈な組織の大物V・W・ヴァーガ。いやもう、すごいのなんのって。

キャリーとデーヴィッドの最後の対決の妙味。絶品。これがまたシニカルなブックエンドの効果もあげている。

メリー・エリザベス・ウィンステッドは犯罪を呼ぶ女ニッキ・スワンゴ。「10クローバーレーン」以来のお気に入りの彼女、今回はすっぽんぽんにもなるし、嫌がらせのタンポンも引き出すし、いやもう、すごいのなんのって。退場の仕方がちょっと能がなかったけど、その愛と誠の行動力は心臓串刺しのかっこよさ。

グロリアとニッキの束の間の出会いと共闘がこれまた珠玉。



展開を知らずにみれば、ノア・ハウリーが作り上げたこの暗黒のオデッセーに確実に魅せられる。時として、「ツイン・ピークス」風味のシュールな展開もある。演出は、エピソード1のハウリーが、映像センスも含めてピカイチ。最後の2話のキース・ゴードンもいいが、俳優出身の彼は演技の引き出し方は抜群だが、アクション演出が弱い。キモとなるべき力業を回避する傾向がある。



さて、ついでに、書き忘れた「天国の門」の件。

クライテリオン版を見て、改めて映像の美しさに魅せられたものの、作品評価は1980年に封切られたときの、ヴィンセント・キャンビーの酷評が時代を超えて、もっともふさわしい。どれほど年月が経っても、この作品が映画史上もっとも悪名を残した愚作であることに変りはない。スティーヴン・バックの「ファイナル・カット」を読んで、マイケル・チミーノ(本人曰く、正確にはチャミーノと発音するそうだ。アクセントはミ)の、監督として恥ずべきおごりも再確認した。これは、監督エゴのもっとも醜悪な発露の映画なのである。同業者として、「天国の門」を認めることはできない。

湯水のごとく金をムダ使いしたという観点を別にしても、「天国の門」は脚本がお粗末だ。8年かけて何稿も書き直すうちに、チミーノは狂ってしまったのかもしれない。主人公のエイヴリルの立ち位置が曖昧だ。キャラクター設定にも魅力を感じない。要は、ジョンソン・カウンティー・ウォーと呼ばれる開拓地のもめごとでリンチされてしまったジェームス・エイヴリルと愛人のエラを別のキャラクターに生まれ変えさせてかれらの「無念の思い」を追悼したいという気持ちだけが前に出て、大作映画史上もっとも魅力に欠ける主人公を作り上げてしまった。しかも、演ずるクリス・クリストファーソンは、持たざるものを演ずればそれなりの魅力を発揮するものの、持つもののエレガンスは皆無の大根役者。どうにもならない。



クリストファー・ウォーケンは「ディア・ハンター」まんまの演技スタンスで一本調子。主役トリオではイサベル・ユペールがひんぱんに裸になって自由奔放に役を感があるが、スニークプレヴューの惨たんたる結果で急遽撮り足された脈絡のない殺戮シーンのゆえ、退場がお粗末。印象は悪い。

哀れなのは10週間モンタナのロケ地にいて一日しか出番がなかったというジョン・ハート。卒業式の異様に長いスピーチ以外なんの見せ場もなく無残。「エレファント・マン」の撮影を直後に控え、異様に長引く撮影にうんざりしていたようだ。

クライマックスのアクションは、導入部のハーヴァード卒業式での円舞とリンクするもうひとつの輪舞。しかし、移民の女たちも銃をとって戦ったという以外、迫力もリアリティもない。コンセプトだけが先行した戦いで、サム・ウォーターストン率いるワルの集団が「ちびっ子ギャング」に堕している。

ということを前提で考え、特筆に値するいくつかのエピソードを掲げておこう。
ひとつはエイヴリルが汽車で到着する州都の活気。円舞でもエキストラが2500人いたというのだから、こちらもエキストラは2000を越えるだろう。ひっきりなしに馬車が動き回るブームタウンの活気はあっけにとられるほどすごい。しかし、中心で動くエイヴリルの存在感も芝居も稀薄。なんら物語に貢献していない。

文句なしに素晴らしいのは移民たちのスケートリンク、ヘヴンス・ゲートでのローラースケート円舞。この10分は、芸術である。このエピソードのしめくくりが、歴史の彼方に消えていったエイヴリルとエラへのオマージュにもなっている。とはいえ、この芸術の魅力の根幹はクリストファーセンでもユペールでもない。若干22才だった作曲家デーヴィッド・マンスフィールドのパフォーマンスである。ボブ・ディランのバックバンドで名を成したこの若者は、移民団のヴァイオリン弾きとして登場し、得意のローラースケートで奇蹟の失踪名演奏を見せる。これはいつ見てもすごい。

ただし、2009年度制作のDVDでは、このエピソードに挿入される酔っぱらったジェフ・ブリッジスをクリスが介抱するくだりの映像が暗く、足を引っ張る。クライテリオン版はオープニングショットの現像ミスとしか言い様のない暗さも含め、気の行かない映像がすべて修正されている。


「失踪名演奏」ではありませんね。「疾走名演奏」でした。他にも誤字脱字があるけれど、師走だし、ご勘弁を。


2017/12/29 (金)

FARGO SEASON 3は何が素晴らしいのか。


脚本が一流で俳優が超一級完璧のアンサンブル。これは日本語吹替え版で見てはいけない。キャリー・クーンやデーヴィッド・シューリスのニュアンスを体得できる日本の役者がいるか?この珠玉のやりとりを日本語に置き換えられるか?無理無理無理。

52分10話を三晩に分けて見たわけです。評価は第一話から順に並べるとこうなる。

A+、A−、B+、A−、A−、A、A、A+、A+、A+。

わかります、この美しい曲線。頭でどーん、がつーんと来て、ちょい落ちたかというところで徐々に盛り返し、最後がどっかーんがつーんの三連打。今、話題のミステリー「屍人荘の殺人」の意表を衝く展開と主役カップルのキャラの掘り下げも面白かったけれど、これも、意外な隠し球がどんどこ出て来て、あれよあれよの大アクションに昇華されていく。いや、すごい。



すごさのトップがキャリーとデーヴィッドとメリー・エリザベス・ウィンステッド。やや落ちてユアン・マクレガーとマイケル・スタールバーグ。脇も粒ぞろい。

キャリーは「ファーゴ」シリーズ伝統の女シェリフ、グロリア・バーグル。夫がゲイの恋人ができて去ってしまい、ローティーンの息子を抱えて、上司の偏見と戦う孤独な捜査官グロリア・バーグル。

デーヴィッドは「ワンダー・ウーマン」で大芝居の悪役をこなしていたが、こちらは、アラン・リックマンの困惑マウスをパロッたようなだらしない中開きの口でどぎつい脅しを繰り出す静かで強烈な組織の大物V・W・ヴァーガ。いやもう、すごいのなんのって。

キャリーとデーヴィッドの最後の対決の妙味。絶品。これがまたシニカルなブックエンドの効果もあげている。

メリー・エリザベス・ウィンステッドは犯罪を呼ぶ女ニッキ・スワンゴ。「10クローバーレーン」以来のお気に入りの彼女、今回はすっぽんぽんにもなるし、嫌がらせのタンポンも引き出すし、いやもう、すごいのなんのって。退場の仕方がちょっと能がなかったけど、その愛と誠の行動力は心臓串刺しのかっこよさ。

グロリアとニッキの束の間の出会いと共闘がこれまた珠玉。



展開を知らずにみれば、ノア・ハウリーが作り上げたこの暗黒のオデッセーに確実に魅せられる。時として、「ツイン・ピークス」風味のシュールな展開もある。演出は、エピソード1のハウリーが、映像センスも含めてピカイチ。最後の2話のキース・ゴードンもいいが、俳優出身の彼は演技の引き出し方は抜群だが、アクション演出が弱い。キモとなるべき力業を回避する傾向がある。



さて、ついでに、書き忘れた「天国の門」の件。

クライテリオン版を見て、改めて映像の美しさに魅せられたものの、作品評価は1980年に封切られたときの、ヴィンセント・キャンビーの酷評が時代を超えて、もっともふさわしい。どれほど年月が経っても、この作品が映画史上もっとも悪名を残した愚作であることに変りはない。スティーヴン・バックの「ファイナル・カット」を読んで、マイケル・チミーノ(本人曰く、正確にはチャミーノと発音するそうだ。アクセントはミ)の、監督として恥ずべきおごりも再確認した。これは、監督エゴのもっとも醜悪な発露の映画なのである。同業者として、「天国の門」を認めることはできない。

湯水のごとく金をムダ使いしたという観点を別にしても、「天国の門」は脚本がお粗末だ。8年かけて何稿も書き直すうちに、チミーノは狂ってしまったのかもしれない。主人公のエイヴリルの立ち位置が曖昧だ。キャラクター設定にも魅力を感じない。要は、ジョンソン・カウンティー・ウォーと呼ばれる開拓地のもめごとでリンチされてしまったジェームス・エイヴリルと愛人のエラを別のキャラクターに生まれ変えさせてかれらの「無念の思い」を追悼したいという気持ちだけが前に出て、大作映画史上もっとも魅力に欠ける主人公を作り上げてしまった。しかも、演ずるクリス・クリストファーソンは、持たざるものを演ずればそれなりの魅力を発揮するものの、持つもののエレガンスは皆無の大根役者。どうにもならない。



クリストファー・ウォーケンは「ディア・ハンター」まんまの演技スタンスで一本調子。主役トリオではイサベル・ユペールがひんぱんに裸になって自由奔放に役を感があるが、スニークプレヴューの惨たんたる結果で急遽撮り足された脈絡のない殺戮シーンのゆえ、退場がお粗末。印象は悪い。

哀れなのは10週間モンタナのロケ地にいて一日しか出番がなかったというジョン・ハート。卒業式の異様に長いスピーチ以外なんの見せ場もなく無残。「エレファント・マン」の撮影を直後に控え、異様に長引く撮影にうんざりしていたようだ。

クライマックスのアクションは、導入部のハーヴァード卒業式での円舞とリンクするもうひとつの輪舞。しかし、移民の女たちも銃をとって戦ったという以外、迫力もリアリティもない。コンセプトだけが先行した戦いで、サム・ウォーターストン率いるワルの集団が「ちびっ子ギャング」に堕している。

ということを前提で考え、特筆に値するいくつかのエピソードを掲げておこう。
ひとつはエイヴリルが汽車で到着する州都の活気。円舞でもエキストラが2500人いたというのだから、こちらもエキストラは2000を越えるだろう。ひっきりなしに馬車が動き回るブームタウンの活気はあっけにとられるほどすごい。しかし、中心で動くエイヴリルの存在感も芝居も稀薄。なんら物語に貢献していない。

文句なしに素晴らしいのは移民たちのスケートリンク、ヘヴンス・ゲートでのローラースケート円舞。この10分は、芸術である。このエピソードのしめくくりが、歴史の彼方に消えていったエイヴリルとエラへのオマージュにもなっている。とはいえ、この芸術の魅力の根幹はクリストファーセンでもユペールでもない。若干22才だった作曲家デーヴィッド・マンスフィールドのパフォーマンスである。ボブ・ディランのバックバンドで名を成したこの若者は、移民団のヴァイオリン弾きとして登場し、得意のローラースケートで奇蹟の失踪名演奏を見せる。これはいつ見てもすごい。

ただし、2009年度制作のDVDでは、このエピソードに挿入される酔っぱらったジェフ・ブリッジスをクリスが介抱するくだりの映像が暗く、足を引っ張る。クライテリオン版はオープニングショットの現像ミスとしか言い様のない暗さも含め、気の行かない映像がすべて修正されている。


「失踪名演奏」ではありませんね。「疾走名演奏」でした。他にも誤字脱字があるけれど、師走だし、ご勘弁を。


2017/12/16 (土)

地雷を踏んだスター・ウォーズEPISODE 8。


丁度2年前、エピソード7「フォースの覚醒」を見てアダム・ドライヴァーの存在感に唸り、デイジー・リドリーのスター誕生を祝った。

そしてエピソード8。「最後のジェダイ」。エピソード5「帝国の逆襲」以来のSW最高傑作という評価がアメリカにある。ほぼ絶賛の嵐といっていい。脚本監督はライアン・ジョンソン。高校を舞台にしたフィルムノアール”BRICK”で評判を呼び「ルーパー」でメージャーになった新鋭。「ルーパー」は途中まで見て飽きた。「ブリック」は未見。

結論として、「フォースの覚醒」には遠く及ばない。素晴らしいのはVFXとアダム・ドライヴァー。彼以外のキャストは凡庸からお粗末の間でウロウロ。

レイの登場の瞬間に、あれれ、と思った。顔がふっくらしている。前作のぎらぎらした熱気が何も感じられない。前作の監督JJエイブラハムスは、彼女をよく走らせた。躍動するキャラとして、描き切った。今回は立ち芝居が多い。だから余計、頬から顎にかけての肉付きのよさが気になる。幸せぶとりなのだろう。魅力ゼロ。



マーク・ハミルはルーク役以外ではまったく機能しなかった役者だ。保証書付の二流の役者といっていい。それが、エピソード4でのアレック・ギネス的立ち役を演ずる。無理だ。魅力ゼロ風味ゼロ。

実は、「フォースの覚醒」の最後、老いぼれルークが登場した瞬間、私はがっくりした。やはり、マークは美しく老いてはいない。出番が多くなればなるほど、エピソード8は失敗するだろうと案じ、そうなった。

しかも、作品の半分以上、レイはルークとのスタティックな芝居で縛られている。飽きる。

「スター・ウォーズ」ファンには、私のように、「その後、作る側へ移行した」人間も多くいる。エイブラハムスにしてもジョンソンにしてもそうだろう。そういう作り手が「義理と人情のしがらみ」でオリジナルキャストに固執するのは表現者としての自殺行為だ。我々は、アレック・ギネスがオビーワンを演じて以来、同工異曲のメントアを演じた名優たち(例えばイアン・マッケリン)をスクリーンで眺めて来ているのだ。

老いたルークは別の役者が演ずるべきだった。それが不可能ならスノークのように異形のメイクにすべきだった。マークは地雷だ。



今回は、他の配役でも失敗を犯している。アジア系俳優を多用してくれたことはありがたいが、ローズ役のケリー・マリー・トランは最悪。即興演劇のステージでは溌剌としても、大役で決められた台詞を喋るとなると途端にオーラをなくす若手は多い。彼女はその典型。魅力ゼロどころか相方のフィンを道連れに爆死したようなものだ。二人のエピソードはすべて平板。

ローラ・ダーンのしまりのない顔も大失態キャスティング。彼女の衣装もお粗末。ま、衣装は全篇通じてイマジネーションに欠けるが。

大好きなベニシオは、登場はいいが退場がしょぼすぎる。結局、作品への貢献度はほぼゼロ。

プロットもディテールの杜撰さが目立つ。あれ、どうなった?と思いを巡らすところがいくつか。

最大の弱点は、スノークの宮殿からのレイの脱出。気絶して倒れて、次に出て来るときにはチューバッカとミレニアム・ファルコンの中。その間、台詞で「レイは脱出した」と帳尻を合わせてはいるが、スルーしていいポイントではない。脱出時の葛藤があるべきだ。殊に、そこに意識不明のカイロ・レンが倒れているわけだから。一体全体、チューバッカはどうやってレイと再会できたのか。こういった気の行かない展開が随所にある。

上映終了後、満員の観客は疲れ切ったように席を立った。拍手をするものは皆無だった。エピソード9を見る気は失せた。


 a-Nikki 1.02