2024/12/27 (金) 9月以降の映画雑記帳。
■ 9月の映画群。
「彼女たちの舞台」 ジャック・リヴェットの1988年度作品。女優たちが生き生きしている。156分。終盤の展開は劇的すぎる。シンプルで効果的なカメラが良い。評価:A
「金環食」 1975年の封切り時よりは好意的に見ることができた。宇野重吉、仲代達矢、三國連太郎の三人はそれぞれ見せ場があり、きわ立っている。それに反し高橋悦史の力み芝居、女たちの扱いの軽さ、山本薩夫演出の古さに辟易。石川達三原作の面白さが全て。余計なシーンを加えた脚本はCクラス。評価:B +
「親愛なる同志たちへ」 ヴェニス審査員グランプリの2020作品。アンドレイ・コンチャロフスキーのダイナミックな演出で労働争議と弾圧までは見せる。終盤の娘探しが全く説得力に欠ける。殊にKGBの男が助けるのはご都合主義でしかない。ユリア・ヴィソツカヤは力演。父親役のセルゲイ・イルマンはこの作品がデビュー。つまりアマチュア。これが素晴らしい。とはいえ、キーとなる巡査役のアマチュア氏は棒読みでガックリ。評価:A-
「喪うHIS THREE DAUGHTERS」 キャリー・クーン、ナターシャ・レオン、エリザベス・オルセンによる演技巧者の会話劇。キャリーが圧倒的にうまい。評価:A -
■ 10月の映画群。
「憐れみの3章KINDS OF KINDNESS」 ヨルゴス・ランティマス先祖返りの愚作。途中で退席。評価:C –
「THE DELIVERANCE」 リー・ダニエルス作品。アンドラ・ディー、グレン・クロース、アンジャヌーの演技合戦。評価:A –
「涙するまで、生きる」 カミュの短編「客」をダビド・オールホフェンが監督。ヴィーゴ・モーテンセンの完璧なフランス語芝居に圧倒される。彼は語学の天才だ。独立運動が盛り上がった頃のアルジェリアという要素をカミュ作品に加えて興味深い。レタ・カデブ共演。この作品でカミュの生き様と作品を学ぶようになった。評価:A
「トラフィック」 TIFFで鑑賞。ムンジウの脚本ひどし。ルーマニア移民の実情と美術窃盗の繋ぎが雑。アナマリア・バルトロメイ見たさに行ったが途中でギヴアップ。評価:C
■ 11月の映画群。
「ブラック・ドッグ」 TIFFで鑑賞。ゴビの撮影が見事。ナラティヴ弱し。Eddie pengと黒犬の名コンビが魅力的。評価:A -。
「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」 導入部はトーク・セッションだがティルダとジュリエンヌの名演にぐんぐん引き込まれる。アルモドヴァルのベストではないが名匠の名に恥じない。評価:A
「シヴィル・ウォー」 キルステン・ダンストとケイリー・スピーニーのchanging guardsがキモ。ワグネル・マウラも含む四人旅のプロセスが秀逸。アレックス・ガーランドはヴェトナム戦争終盤やチリのアジェンデ政権終盤大統領府の戦いを参考にしている筈だが、ホワイトハウスのエピソードはvideo gameのレヴェル。ジャーナリストのリアルが消えている。ジャーナリストの一言で粛清を中断する戦闘部隊はコミック・ブックの展開。それでも9割は素晴らしかったから評価A。
「クラウド」 この駄作がアカデミー賞国際映画部門の日本代表?!脚本稚拙。セリフひどし。偶然の出会いが2ヶ所。ラスト5分残して呆れて退席。評価:C
「ディスクレーマー」 大好きなアルフォンゾ・キュアロンのリミテッド・シリーズゆえ大期待で見始めたものの・・・。ケイト・ブランシェットの若い頃を演じたレイラ・ジョージはヴィンセント・ドノフリオとグレタ・スカーキの娘! ケイト、ケヴィン、レズリー、サッシャの演技陣、および撮影は素晴らしい。しかししかししかし、レイピストが翌日も女の周辺をうろついて、前夜傷つけると脅した子供を助けるために海に飛び込むか? プロット展開に無理があり。評価:A -
「SHOGUN」エピソード1&2。 撮影とCGは見事。役者はコズモ・ジャーヴィスと浅野忠信に惹かれた。脚本に気のいかぬ部分あり。天皇制を無視したシステムゆえauthenticityに欠ける。穂志もえかと向里祐香の若手女優がいい。アンナ・サワイは二階堂ふみに劣る。評価:B +
「ぼくのお日さま」 この一年に見た日本映画のベスト。奥山大志が監督・脚本・撮影・編集。池松壮亮もいいし少年少女も素晴らしい。エンドクレディットもオシャレ。繊細なタッチに心洗われる。評価:A
「グラディエーターU」 派手。さすがリドリー。前の「グラディエーター」よりは好き。終盤のデンゼルの行動が仇役になるための唐突さあり。もっと「スパルタカス」のピーター・ユスティノフよりにすべきだった。皇帝ゲタのジョセフ・ケインが一番のワルでいいじゃないか。評価:A -
「ナミビアの砂漠」 河合優美の才能無駄使い。男二人に同工異曲の展開で「ごめんなさい」を言わせる山中遥子の才能のなさよ。評価:C
「2度目のはなればなれ」 マイケル・ケインの名人芸ここに極まれり。グレンダ・ジャクソンも見事。名優たちの年輪が心を打つ。評価:A -
「WOLFS」 クルーニーとピットがじゃれ合うだけの映画。評価:C
■ 12月の映画群。
「アウシュヴィッツのチャンピオン」 主役のピヨートル・グロヴァッキ、レフリーの若手ピヨートル・ヴィトコウスキがいい。脚本がイマイチ。評価:A –
「正体」 ひどい脚本。評価:C
「蛇の道」 恐ろしくお粗末な脚本。デミアン、マチュがよく出たと思う。柴咲コウの頑張りはすごい。が、セリフを提供するだけが精一杯でニュアンスまでは無理だった。フランス語を喋れない監督が演出しているのだから、いくら役者が頑張っても限界がある。評価:C
「あんのこと」 実話ベースとはいえ佐藤二朗のキャラを貶める方法論が貧しい。稲垣吾郎のジャーナリストが抱えているアンビヴァレンスが面白いのにそこをスルーしてしまっている。終盤がハチャメチャ。山中といい、この入江悠といい、河合優美の才能を前にして監督としての機能を喪失しているとしか思えない。評価:C +
「カラー・パープル」 見事なミュージカル。ブリッツ・バザウーレのヴィジュアル・センスに感銘。この調子で「弥助プロジェクト」に取り組むと思うと複雑な気持ち。本人が「300」や「マッド・マックス」路線を目指すと言っているわけだし。チンケな織田信長が出て来るんだろうな。評価:A -
「セキュリティ・チェック」 タロンとベイトマンの好演で前半快調。が、ヒロイン狙撃の脅しがご都合主義の展開となり、そこで緊張の糸が一気に切れた。サスペンスものは一手一手の信憑性が命。ここは明らかな手抜き。以降ラストまで直線崩壊。評価:B
「LA PALMA」 特撮を見せるためのお粗末な人間関係に呆れる。評価:C –
「65」 貧乏人のジュラシック・パーク。アダム・ドライヴァーがなぜこの脚本で出演する気になったのかが最大の謎。評価:B
「イカ・ゲームSEASON 2」 7話一気見。シーズン1より圧倒的に面白い。最大のポイントはイ・ビョンホンのイノの扱い。あとは新規参入のキャストの妙味。ワイルド・カードになりそうなパク・ギュヨン。トランスジェンダーの元特殊工作員パク・ソンフン。元アイドル・トリオのチェ・スンヒョン、チョ・ユリ、イム・シワン。老母のカン・エシムなどなど魅力的で演技巧者でもある。誰が倒れてももったいないと思う。評価:A +
|