2022/05/09 (月)

ユキのこと。


ユキ(渡辺裕之)の訃報は遊人から聞いた。5月5日のことだ。その三日前、「TOKYO VICE」のエピソード2で、渡辺謙さんの警察上司を演ずるユキを見て、齢を重ねて渋い役者になったな、と「ウィンディー」(1984)の頃を思い出したばかりだった。その日独合作映画の過酷な現場で、ユキと私は、主演俳優と監督という関係以上の「戦友」として、二ヶ月に及ぶキャラバン撮影を生き抜いた。

エピソード2を見た時、少しだけ、気になったことがある。ユキの声のトーンだ。もともと、ユキの声は「通る声」ではなかった。「通る声」ではないが、水戸っぽの訛りと絡むと、それが耳に心地よく誠実に響いた。紛れもない「いい奴」のトーンだった。

「TOKYO VICE」で感じたことをなんと言ったらいいかわからない。簡単に言うなら、陰り、と言うことなのかもしれない。でもそれは、このエピソード2のデキの悪さに辟易としていた時の気分だから正しい感覚とは言えない。(エピソード1はマイケル・マンのヴィジュアル演出が脚本の弱点を補って臨場感があった。2は、日本人の血が入っているというだけで抜擢されたとしか思えないJosef Kubotaの演出で、全てがどんくさかった。途中で見るのをやめようと思った時に、ユキが登場したのだ)。

翌日、週刊誌の電話取材を受けた。記憶に残るユキのことを、1時間ほど語った。記事で引用されるのは一言か二言だろう。


取材では、ユキと最後にゴルフのラウンドをしたのは「8年から10年前」と言ったものの自信がなかったので、後で昔のゴルフ・ログを調べて愕然とした。

ユキとの最後のラウンドは、2004年の11月だった。「自由戀愛」の仕上げの最中だ。ということは、17年以上、会っていなかったことになる。

ユキとのゴルフは、プロとマンツーマンのラウンド・レッスンを受けているようなものだった。私は、ユキの指導をきちんと聞く良い生徒だった。大して上達はしなかったが、ユキの助言は的確で、以降も、ゴルフをやるたびに、あの時、ユキはこう言ったな、とか、ユキはこう打ったな、とか思い出すことが多々あった。ゴルフへ行くたびに思い出していたから、最後のラウンドがずっと前だったことなど忘れていたのかもしれない。

なぜ2004年11月で我々のラウンドが止まってしまったのかというと、2005年にユキが巻き込まれた詐欺事件が関連している。メディアでも色々書き立てられてゴルフどころではあるまい、と私の方から誘うことは控えた。一度か二度、電話では話した気もする。そのうちに、私の本業が忙しくなった。海外にも頻繁に行っていた。またいつかラウンドしよう、と思っているうちに、時がどんどん流れ、交流が途切れてしまった。

今は、ただユキの冥福を祈るのみ。合掌。


2022/04/26 (火)

ENCHANTED BY ANDREA RISEBOROUGHまたはアンドレアの神秘研究A


私が漁るアンドレア出演作は、2008年の「マーガレット・サッチャー」を例外として、彼女が30代半ばに達した2014年以降が基本だ。年度順に並べるとこうなる。

1「サイレント・アイランド」(2014・DVD購入)
2「Hidden」(2015・DVD注文)
3「ノクターナル・アニマルズ」(2016・配信観賞:A)
4「羊飼いと屠殺者」(2016・配信観賞:A -)
5「National Treasure(4話TV)」(2016・DVD購入)
6「The Witness for Prosecution(2話TV)」(2016・DVD購入)
7「ブラック・ミラー(1話)」(2017・配信観賞:A -)
8「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」(2017・DVD観賞:B -)
9「マンディ」(2018・配信観賞:C -)
10「ナンシー」(2018・DVD観賞:A)
11「Burden」(2018・DVD注文)
12「Waco」(2018・DVD及び配信捜索中)
13「ニューヨーク親切なロシア料理店」(2019・配信観賞:C +)
14「ZeroZeroZero」(2019・配信観賞&DVD購入:A +)
15「Possessor」(2020・DVD購入)
16「Luxor」(2020・DVD注文)
17「The Electrical Life of Louis Wain」(2020・DVD購入)


リストアップした作品のABC評価は作品の採点であって、アンドレアの魅力指数及び貢献度は考慮していない。例えば、3の「ノクターナル・アニマルズ」でのアンドレアはお遊びのキャメオで、冒頭1シーンで主役のエイミー・アダムスとのやりとりがあるだけ。彼女の評価はC。

この作品の傑出ポイントとなると、小説のエピソードに出演するマイケル・シャノンがダントツで、ワルのアーロン・テイラー・ジョンソンと虚実入り混じった復讐劇の主人公であるジェイク・ジレンホールがこれに続く。ヒロインであるエイミーの貢献度はかなり低い。彼女が唯一評価できるのはグロテスクなリパブリカン保守派リッチ・ビッチの母親を怪演するローラ・リニーとのシーンのみ。シャノンの肺がんTexan Lawmanには涙が出るほど痺れた。

脚本・監督のトム・フォードはアンディ・ウォーホルとも交流が深かったデザイナー。冒頭のグロテスクで奇抜な展示はかなりウォーホリック。故にナックルボール型フィルムノアールに仕上がっている。

「購入」とあって作品評価のないものはまだ見ていないということ。「注文」とあるのは、ブツがまだ手元に届いていないということ。

それでは、観賞作のアンドレアを順に検証してみよう。


「羊飼いと屠殺者」。南アの死刑制度にまつわる人種対立、人権問題を巧みに組み込んだオリヴァー・シュミッツ監督の力作。死刑執行シーンの生々しさは半端ではない。主役は人権派弁護士のスティーヴ・クーガン。飄々とした個性が作品の暗黒を救う。アンドレアは敏腕な女検事。出番はそれほど多くない。南ア訛りのスピーチがマジでリアル。彼女の評価もA -。

「ブラック・ミラーの一編クロコダイル」。ジョン・ヒルコートは「ザ・ロード」でも「欲望のバージニア」でも、一流の企画を三流の凡作に貶めた監督だが、この近未来のブラックなミステリーではいい仕事をしている。アンドレアの絶望に至る心の旅路が素晴らしい。彼女の評価はA。

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」。ビリー・ジーン・キングを演ずるエマ・ストーンは頑張っているが、演出・脚本が凡庸。アンドレアはエマのレスビアン相手のヘアスタイリスト。特に演技の見せ場もなく評価は作品並みのB -。


超絶駄作「マンディ」。異才気取りの二世監督パノス・コスマトスによるカルト復讐劇で、今や落ち目のニコラス・ケイジが主演で惨めに吠えまくっている。アンドレアはその最愛のヨメ。仕事量としては一日か二日の拘束だろう。評価はC。このお粗末な脚本を読んで、アンドレアがよく出演を了承したと思う。ギャラがよかったとも思えない。彼女はお金で転ぶような女優でもない。こういうチープ・スプラッターに出ることで、演技環境のロック・ボトムを体験したかったのだろうか。ニコラスもしくは監督に興味があるか、関係者にボーイフレンドがいたのだろうか、というミステリーだけが興味として残る。

「ナンシー」。この年、彼女はアメリカン・カルトを題材とした作品に立て続けに出ている。「マンディ」に続く「ナンシー」は誘拐犯の娘として育てられた(かもしれない)女性を彼女が演ずるサイコロジカル・スリラーだ。小品だが、キリリと引き締まっている。アンドレアも、「わたしは何者?」という葛藤を抱えて正常と異常の細い線上を綱渡りするヒロインを、ニュアンス巧みに演じている。演技者アンドレアの面目躍如ではあるが、女の魅力は封印してしまっている。彼女の評価はA。周囲を演技巧者がかためているので、演技の見せ場は多々ある。

導入部の、育ての親(アン・ダウド)との絡みは宝石の輝き。その後、ジョン・レグイザモ、スティーヴ・ブシェミ、J・スミス・キャメロンとのシーンも全て良い。脚本・監督のクリスティナ・チョイはこれからが期待される女性監督だ。問題は、「ナンシー」DVD日本版のパッケージ。監督の日本語表記の上に商品登録カードが貼ってあり、読めない。不愉快。


「ナンシー」に続く「Burden(重荷)」はまだ手元に届いていないが、予告編を見る限り、アンドレアは米サウス・カロライナ訛りに挑んでいる。作品の骨子は、1996年のサウス・カロライナを舞台にKKKから抜けようとする白人カップルの戦い。アメリカン・カルトの流れが続くことになる。それと前後してアンドレアが出ているのは、ブランチ・ダヴィデアンの闘争と自滅を全6話4時間52分で描くミニシリーズ「Waco」だ。「ウェイコ」でのアンドレアはテイラー・キッチュ演ずる教祖デーヴィッド・コレシュの信徒として全6話に出演している。ということは、アメリカの闇に挑む肩慣らしとして「マンディ」を選んだ可能性もある。

「ウェイコ」は一時期Netflixで配信されていたのでマイ・リストに入れておいたが、見る前に契約切れで消えてしまった。DVDも出ていない。アマゾン・プライムでもヒットしない。現時点では鋭意捜索中ということになる。

「ニューヨーク親切なロシア料理店」。ロネ・シェルフィグはこんなにヘタな監督だったのか、とびっくりした作品。ゾーイ・カザンは才能ある女優ではあるが、顔の作りが大胆にマンガのピノキオ系だ。ゆえに大袈裟な感情表現は作品の足を引っ張る。その個性を、コーエン・ブラザースのように巧みに使う監督もいる。ロネは、ゾーイの魅力を引き出せなかった。その暴力夫は、演技学校の劣等生にしか見えない。芸達者ビル・ナイも、実につまらない役どころだし、天才俳優ケイレブ・ランドリー・ジョーンズも混乱しているように見える。タハール・ラヒムに感ずるのも「困惑」だ。

ロシア料理店を中心とする人間関係の連携もしくはラ・ロンドがギクシャクしている。雪の屋外で子供が一夜過ごしたかのような意味不明のエピソードも出て来る。見知らぬ人々の優しさが空回りしているだけ。アンドレアも、ルックスは、「ゼロゼロゼロ」と同時期の撮影ゆえスッキリはしているのに、言動が行き当たりばったりで退屈だ。彼女の評価は作品よりは少し甘いB。

ここまで書いて来て思い出した。アンドレアはCONTORTIONISTなのだという。体を自在に曲げたり捻ったりする曲芸師だ。首の後ろに足を回して引っ掛けるなんてこともできるらしい。そういうしなやかさをフルに使って、サッチャーの「形」を表現したのだろう。サッチャーを演じたアンドレアはA。

アンドレア・ライズボローを巡るマジカル・ミステリー・ツアーの出発点はAMAZONリミテッド・シリーズ「ゼロゼロゼロ」だった。ゆえに、この作品は気を入れて絶賛したい。当然、長くなる。次回に回そう。


2022/04/26 (火)

ENCHANTED BY ANDREA RISEBOROUGHまたはアンドレアの神秘研究A


私が漁るアンドレア出演作は、2008年の「マーガレット・サッチャー」を例外として、彼女が30代半ばに達した2014年以降が基本だ。年度順に並べるとこうなる。

1「サイレント・アイランド」(2014・DVD購入)
2「Hidden」(2015・DVD注文)
3「ノクターナル・アニマルズ」(2016・配信観賞:A)
4「羊飼いと屠殺者」(2016・配信観賞:A -)
5「National Treasure(4話TV)」(2016・DVD購入)
6「The Witness for Prosecution(2話TV)」(2016・DVD購入)
7「ブラック・ミラー(1話)」(2017・配信観賞:A -)
8「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」(2017・DVD観賞:B -)
9「マンディ」(2018・配信観賞:C -)
10「ナンシー」(2018・DVD観賞:A)
11「Burden」(2018・DVD注文)
12「Waco」(2018・DVD及び配信捜索中)
13「ニューヨーク親切なロシア料理店」(2019・配信観賞:C +)
14「ZeroZeroZero」(2019・配信観賞&DVD購入:A +)
15「Possessor」(2020・DVD購入)
16「Luxor」(2020・DVD注文)
17「The Electrical Life of Louis Wain」(2020・DVD購入)


リストアップした作品のABC評価は作品の採点であって、アンドレアの魅力指数及び貢献度は考慮していない。例えば、3の「ノクターナル・アニマルズ」でのアンドレアはお遊びのキャメオで、冒頭1シーンで主役のエイミー・アダムスとのやりとりがあるだけ。彼女の評価はC。

この作品の傑出ポイントとなると、小説のエピソードに出演するマイケル・シャノンがダントツで、ワルのアーロン・テイラー・ジョンソンと虚実入り混じった復讐劇の主人公であるジェイク・ジレンホールがこれに続く。ヒロインであるエイミーの貢献度はかなり低い。彼女が唯一評価できるのはグロテスクなリパブリカン保守派リッチ・ビッチの母親を怪演するローラ・リニーとのシーンのみ。シャノンの肺がんTexan Lawmanには涙が出るほど痺れた。

脚本・監督のトム・フォードはアンディ・ウォーホルとも交流が深かったデザイナー。冒頭のグロテスクで奇抜な展示はかなりウォーホリック。故にナックルボール型フィルムノアールに仕上がっている。

「購入」とあって作品評価のないものはまだ見ていないということ。「注文」とあるのは、ブツがまだ手元に届いていないということ。

それでは、観賞作のアンドレアを順に検証してみよう。


「羊飼いと屠殺者」。南アの死刑制度にまつわる人種対立、人権問題を巧みに組み込んだオリヴァー・シュミッツ監督の力作。死刑執行シーンの生々しさは半端ではない。主役は人権派弁護士のスティーヴ・クーガン。飄々とした個性が作品の暗黒を救う。アンドレアは敏腕な女検事。出番はそれほど多くない。南ア訛りのスピーチがマジでリアル。彼女の評価もA -。

「ブラック・ミラーの一編クロコダイル」。ジョン・ヒルコートは「ザ・ロード」でも「欲望のバージニア」でも、一流の企画を三流の凡作に貶めた監督だが、この近未来のブラックなミステリーではいい仕事をしている。アンドレアの絶望に至る心の旅路が素晴らしい。彼女の評価はA。

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」。ビリー・ジーン・キングを演ずるエマ・ストーンは頑張っているが、演出・脚本が凡庸。アンドレアはエマのレスビアン相手のヘアスタイリスト。特に演技の見せ場もなく評価は作品並みのB -。


超絶駄作「マンディ」。異才気取りの二世監督パノス・コスマトスによるカルト復讐劇で、今や落ち目のニコラス・ケイジが主演で惨めに吠えまくっている。アンドレアはその最愛のヨメ。仕事量としては一日か二日の拘束だろう。評価はC。このお粗末な脚本を読んで、アンドレアがよく出演を了承したと思う。ギャラがよかったとも思えない。彼女はお金で転ぶような女優でもない。こういうチープ・スプラッターに出ることで、演技環境のロック・ボトムを体験したかったのだろうか。ニコラスもしくは監督に興味があるか、関係者にボーイフレンドがいたのだろうか、というミステリーだけが興味として残る。

「ナンシー」。この年、彼女はアメリカン・カルトを題材とした作品に立て続けに出ている。「マンディ」に続く「ナンシー」は誘拐犯の娘として育てられた(かもしれない)女性を彼女が演ずるサイコロジカル・スリラーだ。小品だが、キリリと引き締まっている。アンドレアも、「わたしは何者?」という葛藤を抱えて正常と異常の細い線上を綱渡りするヒロインを、ニュアンス巧みに演じている。演技者アンドレアの面目躍如ではあるが、女の魅力は封印してしまっている。彼女の評価はA。周囲を演技巧者がかためているので、演技の見せ場は多々ある。

導入部の、育ての親(アン・ダウド)との絡みは宝石の輝き。その後、ジョン・レグイザモ、スティーヴ・ブシェミ、J・スミス・キャメロンとのシーンも全て良い。脚本・監督のクリスティナ・チョイはこれからが期待される女性監督だ。問題は、「ナンシー」DVD日本版のパッケージ。監督の日本語表記の上に商品登録カードが貼ってあり、読めない。不愉快。


「ナンシー」に続く「Burden(重荷)」はまだ手元に届いていないが、予告編を見る限り、アンドレアは米サウス・カロライナ訛りに挑んでいる。作品の骨子は、1996年のサウス・カロライナを舞台にKKKから抜けようとする白人カップルの戦い。アメリカン・カルトの流れが続くことになる。それと前後してアンドレアが出ているのは、ブランチ・ダヴィデアンの闘争と自滅を全6話4時間52分で描くミニシリーズ「Waco」だ。「ウェイコ」でのアンドレアはテイラー・キッチュ演ずる教祖デーヴィッド・コレシュの信徒として全6話に出演している。ということは、アメリカの闇に挑む肩慣らしとして「マンディ」を選んだ可能性もある。

「ウェイコ」は一時期Netflixで配信されていたのでマイ・リストに入れておいたが、見る前に契約切れで消えてしまった。DVDも出ていない。アマゾン・プライムでもヒットしない。現時点では鋭意捜索中ということになる。

「ニューヨーク親切なロシア料理店」。ロネ・シェルフィグはこんなにヘタな監督だったのか、とびっくりした作品。ゾーイ・カザンは才能ある女優ではあるが、顔の作りが大胆にマンガのピノキオ系だ。ゆえに大袈裟な感情表現は作品の足を引っ張る。その個性を、コーエン・ブラザースのように巧みに使う監督もいる。ロネは、ゾーイの魅力を引き出せなかった。その暴力夫は、演技学校の劣等生にしか見えない。芸達者ビル・ナイも、実につまらない役どころだし、天才俳優ケイレブ・ランドリー・ジョーンズも混乱しているように見える。タハール・ラヒムに感ずるのも「困惑」だ。

ロシア料理店を中心とする人間関係の連携もしくはラ・ロンドがギクシャクしている。雪の屋外で子供が一夜過ごしたかのような意味不明のエピソードも出て来る。見知らぬ人々の優しさが空回りしているだけ。アンドレアも、ルックスは、「ゼロゼロゼロ」と同時期の撮影ゆえスッキリはしているのに、言動が行き当たりばったりで退屈だ。彼女の評価は作品よりは少し甘いB。

ここまで書いて来て思い出した。アンドレアはCONTORTIONISTなのだという。体を自在に曲げたり捻ったりする曲芸師だ。首の後ろに足を回して引っ掛けるなんてこともできるらしい。そういうしなやかさをフルに使って、サッチャーの「形」を表現したのだろう。サッチャーを演じたアンドレアはA。

アンドレア・ライズボローを巡るマジカル・ミステリー・ツアーの出発点はAMAZONリミテッド・シリーズ「ゼロゼロゼロ」だった。ゆえに、この作品は気を入れて絶賛したい。当然、長くなる。次回に回そう。


2022/04/24 (日)

ENCHANTED BY ANDREA RISEBOROUGHまたはアンドレアの神秘研究@


アンドレア・ライズボローは、1981年イングランドE北東部ノーサンバーランド州ニューキャッスル・アポン・タインで生まれた。同地の高校卒業後、ロンドンの王立演劇学校で演技を学ぶ。同級生にはトム・ヒドルストンがいた。在学中から女優活動を始め、2006年には30代以下の俳優に授与されるイアン・チャールソン賞を、「令嬢ジュリー」、「尺には尺を」の二つの舞台出演で受賞した。

私がアンドレアの演技に惹かれたのは2010年前後だが、その時点ではオブセッションといえるほどの磁場はない。作品に興味があれば、ついでに彼女も見て、うまいな、と感心する程度だった。

それが、2019年に作られた「ZeroZeroZero・宿命の麻薬航路」を二カ月前にAmazonで見たことによって、ギアがスーパートップに入ってしまったのだ。30代後半の円熟したアンドレアが放つ、神がかりの気高さに、私は取り憑かれてしまった。

2010年の「わたしを離さないで」、「ブライトン・ロック」、2013年の「オブリビオン」、2014年の「バードマン」、2017年の「スターリンの葬送狂想曲」など既に見た作品まで見ようとは思わない。見知らぬ円熟アンドレアを制覇したい、そして、神秘研究の「源泉」といったパフォーマンスも発見したいーーそんな気持ちで彼女が出演している旧作で見逃したものをネット配信で漁ったり、アマゾンで購入したりしている。


そんな作品群の中で、20代のアンドレアの絶妙演技を堪能できるのはBBC製作の2008年度TVムーヴィ「Margaret Thatcher/The Long Walk to Finchley」だ。

マーガレット・サッチャー役といえば、オスカーに輝いたメリル・ストリープや、つい最近ではNetflixのヒット・シリーズ「ザ・クラウン」でのジリアン・アンダーソンの名演が印象的だが、アンドレアは、彼女たちよりも早く、わずか20代で、24歳から34歳での議員初当選に至るサッチャーの苦難の道のりを見事に演じ切っている。

メリルやジリアン同様、アンドレアはサッチャーの言葉使い、身のこなしを巧妙に再現している。スポットライトを浴びてからのサッチャーが見せた歩き方や首の傾けアングルの身体模写に関しては、アンドレアがメリル、ジリアンを凌いでいるといってもいいくらいだ。無論、メリルやジリアンのサッチャーは首相になってからの「鉄の女」であるゆえ、アンドレアが注入したどこかコミカルなボディランゲージの表現に制約があったことは否めない。

製作体制的には低予算で、室内の会話劇主体に展開するゆえ作品的な高揚は限られてしまうが、アンドレアと共演者たちの演技合戦のヴァリエーションは見応えがある。殊に、生涯のパートナーであるデニス(ロイ・キニア)、政治のパートナーもあり敵対するヒース(サミュエル・ウェスト)とのシーンで、アンドレアは魅力を全開する。ラスト・フレーム、ヒースに無視される新人議員サッチャーの「しんどい」立ち姿と、うんざり顔は、英国的なユーモアの極地に思える。

この作品で、アンドレアはBAFTA(British Academy of Film and Television Awards)の2009年度TV部門主演女優賞にノミネートされている。受賞したのはアンナ・マックスウェル・マーティンだった。(彼女はTVと舞台一辺倒の感があるが、ディケンズの「荒涼館」で私を魅了したすごい女優だ。)

以下は次回。


2022/04/24 (日)

ENCHANTED BY ANDREA RISEBOROUGHまたはアンドレアの神秘研究@


アンドレア・ライズボローは、1981年イングランドE北東部ノーサンバーランド州ニューキャッスル・アポン・タインで生まれた。同地の高校卒業後、ロンドンの王立演劇学校で演技を学ぶ。同級生にはトム・ヒドルストンがいた。在学中から女優活動を始め、2006年には30代以下の俳優に授与されるイアン・チャールソン賞を、「令嬢ジュリー」、「尺には尺を」の二つの舞台出演で受賞した。

私がアンドレアの演技に惹かれたのは2010年前後だが、その時点ではオブセッションといえるほどの磁場はない。作品に興味があれば、ついでに彼女も見て、うまいな、と感心する程度だった。

それが、2019年に作られた「ZeroZeroZero・宿命の麻薬航路」を二カ月前にAmazonで見たことによって、ギアがスーパートップに入ってしまったのだ。30代後半の円熟したアンドレアが放つ、神がかりの気高さに、私は取り憑かれてしまった。

2010年の「わたしを離さないで」、「ブライトン・ロック」、2013年の「オブリビオン」、2014年の「バードマン」、2017年の「スターリンの葬送狂想曲」など既に見た作品まで見ようとは思わない。見知らぬ円熟アンドレアを制覇したい、そして、神秘研究の「源泉」といったパフォーマンスも発見したいーーそんな気持ちで彼女が出演している旧作で見逃したものをネット配信で漁ったり、アマゾンで購入したりしている。


そんな作品群の中で、20代のアンドレアの絶妙演技を堪能できるのはBBC製作の2008年度TVムーヴィ「Margaret Thatcher/The Long Walk to Finchley」だ。

マーガレット・サッチャー役といえば、オスカーに輝いたメリル・ストリープや、つい最近ではNetflixのヒット・シリーズ「ザ・クラウン」でのジリアン・アンダーソンの名演が印象的だが、アンドレアは、彼女たちよりも早く、わずか20代で、24歳から34歳での議員初当選に至るサッチャーの苦難の道のりを見事に演じ切っている。

メリルやジリアン同様、アンドレアはサッチャーの言葉使い、身のこなしを巧妙に再現している。スポットライトを浴びてからのサッチャーが見せた歩き方や首の傾けアングルの身体模写に関しては、アンドレアがメリル、ジリアンを凌いでいるといってもいいくらいだ。無論、メリルやジリアンのサッチャーは首相になってからの「鉄の女」であるゆえ、アンドレアが注入したどこかコミカルなボディランゲージの表現に制約があったことは否めない。

製作体制的には低予算で、室内の会話劇主体に展開するゆえ作品的な高揚は限られてしまうが、アンドレアと共演者たちの演技合戦のヴァリエーションは見応えがある。殊に、生涯のパートナーであるデニス(ロイ・キニア)、政治のパートナーもあり敵対するヒース(サミュエル・ウェスト)とのシーンで、アンドレアは魅力を全開する。ラスト・フレーム、ヒースに無視される新人議員サッチャーの「しんどい」立ち姿と、うんざり顔は、英国的なユーモアの極地に思える。

この作品で、アンドレアはBAFTA(British Academy of Film and Television Awards)の2009年度TV部門主演女優賞にノミネートされている。受賞したのはアンナ・マックスウェル・マーティンだった。(彼女はTVと舞台一辺倒の感があるが、ディケンズの「荒涼館」で私を魅了したすごい女優だ。)

以下は次回。


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