2021/11/12 (金)

「エターナルズ」と「ヤーラ」のハンサムな女たち。


ROTTEN TOMATOESをチェックしたとき「エターナルス」は51%の腐れトマトだった。賛否両論。テンポがのろい/繰り返しに飽きる/「デューン」と比べて世界観に劣る、といった批判がならんでいる。魂の名作「ノマドランド」で売れっ子監督のトップに立ったクローイ・ジャオが、大胆不敵にマーベル・ワールドに踏み込んで足をすくわれたのだろうか。「ハルク」でのアン・リーの無惨な失敗の二の舞なのか。そんな思いを抱えて、過日、旧スカラ座で「エターナルズ」を体験した。

そして、私は、クローイの類稀な才能を再確認したのだった。「エターナルズ」は大傑作だ。

否定論者の意見もわからないではない。が、繰り返しと言えないこともないエターナルズの離合集散のプロセスで育ち醗酵していくものがある。香り高き情感だ。私はその香りに酔い、涙した。



ドゥニ・ヴィルヌーブの「デューン」もその世界観とルックゆえ好きな映画だが、こちらも同じくらい好きだ。ルックに関して言えば、「エターナルズ」は「デューン」に及ばない。ところが、心でくくるなら、「デューン」は「エターナルズ」に遠く及ばない。

エターナルズ10人がそれぞれに素晴らしい。マーベル・ワールドとは思えぬきめ細かなアンビヴァレンスを、サイズの大小こそあれ全員が抱え、そのセンターにセルシ(ジェンマ・チャン)とイカリス(リチャード・マッデン)の悲恋がある。

マイノリティを大量にキャストしたアジアの女性監督の矜持もある。

ハリウッド大作ならアンジェリーナ・ジョリーが単独センターフォワードでボールはすべて彼女の足もとに集めるのに、ここでの彼女は控えめな役割に徹し、ジェンマは勿論、マ・ドンソク(英語名はドン・リー)やクメール・ナンジアニをサポートする。そうやって育ち上がるアジア勢の堂々たる存在感に、私のアジアの血はうずきっぱなしだった。



唯一の黒人ファストス(ブライアン・タイリー・ヘンリー)の扱いもうまい。お茶目パワフルに気分が高揚する見せ場をこなしたかと思うと、人類の究極の愚行であるヒロシマへの原爆投下を体験させている。彼の悲嘆もまた価値ある見せ場になっている。

サルマ・ハエック、リー・マクヒュー、ローレン・リドロフ、そして「チェルノブイリ」のロシア少年兵で私を魅了したバリー・コーガンも、全員が適材適所の名演を奏でる。

最大級のアンビヴァレンスを与えられたリチャード・マッデンが、喜劇と悲劇と史劇とスポーティなアクションの交差する天空で運動量マックスの活躍をするサマは圧巻といっていい。私の見るところ、マッデンは7代目ジェームス・ボンドの最有力候補なのだが、ボンドにならなくとも、彼のスター・パワーは一作ごとに光り輝いていくだろう。

そして、ジェンマ・チャン。このオックスフォード出身の才女に、私は「クレイジー・リッチ」で夢中になった。今回は、完璧なアジアの立ち役だ。

クローイはVFXをふんだんに使う映画であってもロケ場所を大切にし、自然光を巧みに取り入れたシーンを紡いでいる。そのアプローチは「ノマドランド」の延長上にある。撮影監督はマーベル・ワールドを熟知したヴェテランのベン・ディヴィス。クローイのパートナーでもあるカメラマンのジョシュア・ジェイムス・リチャーズはカメラ・オペレーターとして参加し、ベンの仕事ぶりを学びつつ、クローイのイメージをベンに伝える役目も担っている。



「ヤーラ」はNETFLIXで配信中のイタリア映画。ベルガモに住む13才の少女ヤーラが暴行され殺された実話の映画化で、その事件を担当した女検事の4年に及ぶ戦いを描いている。

「輝ける青春」を作ったマルコ・トゥリオ・ジョルダーナの作品ゆえ見てみたら、これもまたハンサム・ウーマンの活躍する傑作であった。

主役の女検事を演じたのはイザベラ・ラゴネーゼ。魅力的で、演技力も抜群。どこかで見た女優だなと思って調べたら、私が以前このブログでも褒めた「イタリアの父」のヒロイン、ミアだった!

あちらは、奔放なる嘘つき妊婦で二流の歌手。こちらは権威とも偏見とも戦う知的なシングル・マザーの女検事。そのどちらも、主演女優賞をまとめてもらってもおかしくない熱演だ。べた惚れ状態の私は、彼女の出演作を2本、ネットでオーダーしてしまった。12月クランクインの新作を準備中だというのに、だいじょうぶかよ、と監督の心が映画ファンの私を戒める。

そういえば、007にもどっぷりつかるつもりで、生みの親、カビー・ブロッコリとハリー・サルツマンがらみの本を二冊イギリスにオーダーした。それを読んで、サム・メンデスの音声解説を聞いて、ダニエル・クレイグの英雄談を綴りたいと思っている。ま、年内は無理だろうけど。


2021/11/12 (金)

「エターナルズ」と「ヤーラ」のハンサムな女たち。


ROTTEN TOMATOESをチェックしたとき「エターナルス」は51%の腐れトマトだった。賛否両論。テンポがのろい/繰り返しに飽きる/「デューン」と比べて世界観に劣る、といった批判がならんでいる。魂の名作「ノマドランド」で売れっ子監督のトップに立ったクローイ・ジャオが、大胆不敵にマーベル・ワールドに踏み込んで足をすくわれたのだろうか。「ハルク」でのアン・リーの無惨な失敗の二の舞なのか。そんな思いを抱えて、過日、旧スカラ座で「エターナルズ」を体験した。

そして、私は、クローイの類稀な才能を再確認したのだった。「エターナルズ」は大傑作だ。

否定論者の意見もわからないではない。が、繰り返しと言えないこともないエターナルズの離合集散のプロセスで育ち醗酵していくものがある。香り高き情感だ。私はその香りに酔い、涙した。



ドゥニ・ヴィルヌーブの「デューン」もその世界観とルックゆえ好きな映画だが、こちらも同じくらい好きだ。ルックに関して言えば、「エターナルズ」は「デューン」に及ばない。ところが、心でくくるなら、「デューン」は「エターナルズ」に遠く及ばない。

エターナルズ10人がそれぞれに素晴らしい。マーベル・ワールドとは思えぬきめ細かなアンビヴァレンスを、サイズの大小こそあれ全員が抱え、そのセンターにセルシ(ジェンマ・チャン)とイカリス(リチャード・マッデン)の悲恋がある。

マイノリティを大量にキャストしたアジアの女性監督の矜持もある。

ハリウッド大作ならアンジェリーナ・ジョリーが単独センターフォワードでボールはすべて彼女の足もとに集めるのに、ここでの彼女は控えめな役割に徹し、ジェンマは勿論、マ・ドンソク(英語名はドン・リー)やクメール・ナンジアニをサポートする。そうやって育ち上がるアジア勢の堂々たる存在感に、私のアジアの血はうずきっぱなしだった。



唯一の黒人ファストス(ブライアン・タイリー・ヘンリー)の扱いもうまい。お茶目パワフルに気分が高揚する見せ場をこなしたかと思うと、人類の究極の愚行であるヒロシマへの原爆投下を体験させている。彼の悲嘆もまた価値ある見せ場になっている。

サルマ・ハエック、リー・マクヒュー、ローレン・リドロフ、そして「チェルノブイリ」のロシア少年兵で私を魅了したバリー・コーガンも、全員が適材適所の名演を奏でる。

最大級のアンビヴァレンスを与えられたリチャード・マッデンが、喜劇と悲劇と史劇とスポーティなアクションの交差する天空で運動量マックスの活躍をするサマは圧巻といっていい。私の見るところ、マッデンは7代目ジェームス・ボンドの最有力候補なのだが、ボンドにならなくとも、彼のスター・パワーは一作ごとに光り輝いていくだろう。

そして、ジェンマ・チャン。このオックスフォード出身の才女に、私は「クレイジー・リッチ」で夢中になった。今回は、完璧なアジアの立ち役だ。

クローイはVFXをふんだんに使う映画であってもロケ場所を大切にし、自然光を巧みに取り入れたシーンを紡いでいる。そのアプローチは「ノマドランド」の延長上にある。撮影監督はマーベル・ワールドを熟知したヴェテランのベン・ディヴィス。クローイのパートナーでもあるカメラマンのジョシュア・ジェイムス・リチャーズはカメラ・オペレーターとして参加し、ベンの仕事ぶりを学びつつ、クローイのイメージをベンに伝える役目も担っている。



「ヤーラ」はNETFLIXで配信中のイタリア映画。ベルガモに住む13才の少女ヤーラが暴行され殺された実話の映画化で、その事件を担当した女検事の4年に及ぶ戦いを描いている。

「輝ける青春」を作ったマルコ・トゥリオ・ジョルダーナの作品ゆえ見てみたら、これもまたハンサム・ウーマンの活躍する傑作であった。

主役の女検事を演じたのはイザベラ・ラゴネーゼ。魅力的で、演技力も抜群。どこかで見た女優だなと思って調べたら、私が以前このブログでも褒めた「イタリアの父」のヒロイン、ミアだった!

あちらは、奔放なる嘘つき妊婦で二流の歌手。こちらは権威とも偏見とも戦う知的なシングル・マザーの女検事。そのどちらも、主演女優賞をまとめてもらってもおかしくない熱演だ。べた惚れ状態の私は、彼女の出演作を2本、ネットでオーダーしてしまった。12月クランクインの新作を準備中だというのに、だいじょうぶかよ、と監督の心が映画ファンの私を戒める。

そういえば、007にもどっぷりつかるつもりで、生みの親、カビー・ブロッコリとハリー・サルツマンがらみの本を二冊イギリスにオーダーした。それを読んで、サム・メンデスの音声解説を聞いて、ダニエル・クレイグの英雄談を綴りたいと思っている。ま、年内は無理だろうけど。


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