2019/07/11 (木)

THE NEWSROOM


2012年から3シーズンに渡って人気を博したHBOの「THE NEWSROOM」の評判は、アメリカへ行くたびに知人たちから聞いていた。積極的に見ようと思わなかったのは、ジェフ・ダニエルス、エミリー・モーティマーが主役だったからかもしれない。彼らだったら、そこそこに見せて当たり前という感じで、鮮度に乏しかった。演出家もTV専科の無難な選択。すべてがオーソドックスなイメージだった。

私は最も大事なアスペクトを忘れていたのだ。

ミニシリーズのよしあしはクリエイターの品格と才気である。このシリーズの生みの親はアーロン・ソーキン。「ソーシャル・ネットワーク」や、最近では「モリーのゲーム」で私をノックアウトした言葉の魔術師だ。それで、アマゾン・プライムでこのタイトルを見つけたとき、即、見始めた。5月7日の朝だった。

シーズン1全10話を一気に見てしまった。約9時間。

エピソード毎の評価をするなら1、4、10が大傑作のA+。3、5、9がA。6、8がA-。2がB-。ソーキンの脚本には文句のつけようがなかった。時事問題を見事にニューズルーム・ドラマに組み込んだ質の高さに圧倒された。ダニエルスを中心にしたアンサンブルキャストも見事だった。マシンガントークの節々に人間味が香り立つ。ワイルドカードとして登場するワンマン社主のジェーン・フォンダも、絶妙だった。



評価の差は、演出家の出来不出来だ。例えば、飛び抜けて評価の低いエピソード2は、アレックス・グレイブスの演出が安っぽかった。さすがにダニエルスが役を見失うことはなかったが、モーティマー以下共演陣の芝居が、すべて大袈裟なお笑いレベルに振られ、脚本のニュアンスを理解できなかった。30分のSIT COMレヴェルの演出だった。それゆえ、グレイブスは二度とこのシリーズに呼ばれていない。

最大評価のエピソード1とシーズン・フィナーレの10はグレッグ・モットーラの演出。4はアラン・ポール。

10話見終わって、シーズン2が気になった。導入部だけ見てみよう、と思ったら止まらなくなった。全10話、明け方まで見続けてしまった。よく笑い、泣き、主人公とともに怒り、やきもきし、何度も唸った。

5/8にはシーズン3を見始めた。すべてが愛おしくて、止まらないのである。これは全7話。エンディングがまた一段ランクをあげた見事さだった。トータルでA+を献上したい最高のTVミニシリーズだ。



丁度、この頃、本国アメリカではHBO放映の「チェルノブイリ」が大絶賛されていた。見たい。が、演出のヨハン・レクトとは何者だ、と調べてみるとスエーデンの映像作家で、ミュージック・ヴィデオ界のキングという評価もある。さらに2016年にはCANAL+を幹事会社としたヨーロッパ産のTVミニシリーズ「THE LAST PANTHERS」を撮っている。その演出センスを確認したくてDVDを購入した。

これは5/13に見始め、全6話を見るのに6/10までかかった。サマンサ・モートン、タハール・ラヒム、ゴラン・ボグダン、ジョン・ハート主演の、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に端を発する犯罪組織の発生と現代の宝石密輸をリンクさせたスリラー。実質主役はユーゴのスター、ボグダン。彼は「ファーゴ」のシーズン3にも出ていたが魅力的な役者だ。ただし、シリーズの出来は脚本がイマイチでB+。レクトの映像センスは第一級。「チェルノブイリ」がとても愉しみになった。

「THE LAST PANTHERS」に時間がかかったのはもうひとつ理由がある。同時期にアメリカから届いた別のミニシリーズに夢中になってしまったためだ。



それが、ベニシオ・デル・トロ、パトリシア・アークェット、ポール・デイノ主演の実録脱獄ドラマ「ESCAPE AT DANNEMORA」。これは全七話を通して演出したベン・スティラーが最大評価されるべき犯罪映画だ。

2015年にニューヨーク州ダネモラ刑務所で起きた二人の凶悪犯の脱走事件を、現地オールロケで仕上げている。監獄のリアルがすごい。実際、当時の囚人や看守も出演している。

ベン・スティラーと言えば、コメディアンのイメージしかなかった。演出作品も基本はコメディである。それが、超リアルな犯罪ドラマに取り組んで、圧倒的な成果をあげている。撮影を担当したジェシカ・リー・ガニエ(カナダ女性)の功績が大きかったにしても、シリアスなスティラーの統率力は尋常ではない。

三人を中心にしたキャストも完璧。

圧巻は、冒頭9分に擬似長回しのSWEAT’S RUNを据えたエピソード5。これはデイノ演ずるスェットが脱走の予行練習として、単独で独房から塀の外のマンホールまでを踏破する9分の長回しという設定。CGを多用して長回しに見せる技法はある程度は見ていてわかったが、トータルで8ヶ月かけ、セットを含む4つの異なったロケーションで撮影された一大プロジェクトであったことまではわからなかった。

こういうダイナミックな発想は日本では絶対に無理だ。アメリカ映画人の底力をまざまざと見せつけられ、堪能したミニシリーズだった。総合評価は当然A+。



6月には後2本、特筆すべきミニシリーズを見た。パク・チャヌクが全6話を演出した「THE LITTLE DRUMMER GIRL」(2018)と「BIG LITTLE LIES」(2017)だ。双方に、アレクサンダー・スカルスガルドが出て、魅力的なリードと唾棄すべき脇役を熱演している。この二作を語り始めると長くなるので別の機会に譲ることにする。どちらもシリーズ評価はA+の大傑作だ。

それにしても。

オールスターゲームでのドジャース勢のお粗末なこと。我がベリンジャーは2三振。カーショーもビューラーも1回を投げてそれぞれ1失点。マンシーはまずい守備。

ワールドシリーズには行けるだろうが、ア・リーグの覇者に勝てるのか?いやいやいや、前期最後の3試合でパドレスに3連敗したようなことが後期では頻発しそうな気もする。ルイス・カスティーヨ、シェーン・ビーバーのクラスが加入しないと、現状の投手陣では先細りは目に見えている。

打線は、なんといっても、ベリンジャーが4月5月の輝きをシーズン終盤とポストシーズンに発揮できるか否かがキー。監督も含む首脳陣が今のチーム構成で満足している様子なのが、とても気にかかる。


2019/07/04 (木)

なんとなんとの70才!


古稀・・・。私はカタカナ表記で「コキ」とする。コキ使う、のコキ。みんな、70才になったからね、コキ使うよ。とはいえ、祝ってくださった皆様に感謝。本日はカリフォルニア時間の7月3日。ドジャース史上、そしてMLB史上、私がもっとも愛するプレイヤー、BELLIことコディ・ベリンジャーも、サヨナラ・ホーマーを含む2ホーマーでお祝いしてくれました。ありがとうありがとう。

これでホームラン(29)はトップと2本差の2位。三日前までトップを独走していた打率は4厘差の3割4分5厘で2位。打点は10点差の70点で2位。(ベリには毎年毎年三冠王を目指してもらいたい。)とにもかくにも私の70才の誕生日にきっちり70打点に仕上げてくれた。なんという思いやり。

29本塁打は、オールスター・ブレーク前のドジャースの記録です。デューク・スナイダーとギル・ホッジスの28本を、私の、アメリカ時間の誕生日の日に越えたのです。

私が監督業を続けている限り、ベリはその華麗な打撃と守備で私を癒し続けてくれるのでしょう。



ということで、ブログは更新したものの、「燃えよ剣」には触れません。秋になれば、色々と書けるでしょう。

何があっても映画の刺激は浴びています。4月に「シャザム!」を見て以来、どうなっているのか。良質なミニシリーズに圧倒されっぱなし。劇場映画よりもアマゾン・プライムや海外から購入のDVDに名作傑作が多く、その空前絶後の興奮で私の感性は研磨されているのです。以下は、そんな映画ジャーナル。

4/28。MOVIX京都にて「バイス」A- 強固な告発姿勢は賛成。演技も皆うまい。が、モノマネは途中で飽きてしまう。

4/29。MOVIX京都にて「荒野にて」B+ 途中まで名作。ブシェミとクロエがいなくなると映画はゆっくりと確実に破綻していく。

5/1。AMAZON PRIMEで「ウェストワールド」SEASON1の#1から#7。トータルでA−。翌日、#8から#10。これはだらだら坂のくだり便。B。結局、登場人物にも作り手にも共感を持てなくなってSEASON2は一話で撤退。

5/3から5/4にかけてDVD4本。
その1。「籠の中の瞳」C-。マーク・フォスターはアホ。彼がよかったのは脚本がよかった「チョコレート」だけ。ブレイク・ライヴリーの美しさだけが虚しく残る。

その2「バッド・タイムス」B。ドルー・ゴダードはタランティーノを神と崇めているのだろう。しかし構成が虚弱。クリス・ヘムスワースのワルガキと、ビル・プルマンの息子ルークが印象に残る。

その3。「ヘレディタリー」B。トニ・コレットはオスカーの主演女優候補になってもおかしくないなどとアメリカの批評家に絶賛されたホラーだが、ストーリーがお粗末。アリ・アスターは評価されすぎ。コレットはうまいが気色ワル。むしろ、「レフトオーヴァーズ」でお気に入りになったアン・ダウドのうまさに魅了された。

その4。「馬を放つ」A-。監督主演のアクタン・アリム・サバトもいいが脇役がうまい。結末がイージーに流れたのは役者たちのスケジュール調整ができなかったためか?



5/5。ここからがミニシリーズ怒濤の大進撃となる。先ずはAMAZON PRIMEで見つけた2008年HBOの人気シリーズ「GENERATION KILL」。

フセインのイラクへ進撃した最前線兵士たちの生き様を記録した従軍記者エヴァン・ライト。彼が書いた原作をベースにしたアレキサンダー・スカルスガルドの出世作でもある。スカルスガルドはこれでターザンに抜擢されたものの映画は不発。結局は演技派として名作傑作シリーズでがんばっている。脚本はライト自身が書いている。

スカルスガルドが演ずるのは歴戦の猛者でいつもクールな軍曹、通称アイスマン。実に魅力的。特典映像に本人が出て来るが、雰囲気はそっくり。表面のクールさは21世紀に甦った「コンバット」のソーンダース(日本語だとサンダースになっちまった)軍曹。しかし、より繊細。

とにかくキャスト全員のアンサンブルがいい。全員実名。何人かは出演もしくは技術顧問としてシリーズに関わっている。

演出は#1、2、3、7がスザンナ・ホワイト。このうち1、2、7がA+。トータルではA評価。全篇見終わったのは6月に入ってからだった。というのも4、5、6の監督が平板で途中だれたのと、格段に面白いミニシリーズにハマってしまったから。「レフトオーヴァーズ」の第一シーズン、「ファーゴ」の第三シーズンに匹敵する極上のミニシリーズ。それはーーー。


 a-Nikki 1.02