2018/12/31 (月)

イヤーエンドのふわふわ。


去年の年末は「FARGO SEASON 3」のキャリー・クーンとデーヴィッド・シューリスに心ウキウキだった。今年はこのところ次回作のアクション・リハーサルでワクワク。

12/29にはNHKBSでW・ユージン・スミスのドキュメンタリー番組があった。70年代にLAに移り住んだ頃、私は彼の写真に魅せられていた。MINAMATAではなく、その前、第二次大戦の写真だ。

ロバート・キャパも好きだったが、ユージンも好きだった。キャパは映画で描きたいと思い続けているが、ユージン・スミスの生き様を映画の文法で考えてみたことはなかった。名前を借りただけだ。

1977年に息子が産まれたとき、EUGENE遊人と名付けた。サイパン島で彼が撮った二枚の写真を眺めながら、名前を決めた記憶がある。「サイパン島山中でアメリカ兵が見つけた死にゆく赤ん坊」と「前線で水を飲む兵士」だ。



NHKの番組はかなり駆け足のドキュメントだったが、彼の人生のアーチは明快につかめた。元妻アイリーン美緒子スミスさんのインタヴュー場面があり、彼女とユージンの出会いと共闘のすべてを切に知りたくなった。

とりあえず、アマゾンで彼の写真集と「ユージン・スミス/水俣に捧げた写真家の1100日」を購入した。後者は山口由美さんが2013年に上梓した一冊で、第19回小学館ノンフィクション大賞を受賞している。そこに、ユージンとアイリーンのドラマが点描されていた。偉大なる写真家の生き方が活写されている渾身のルポルタージュ文学だ。

読み進めながら、私はユージン・スミスのサイパンから沖縄、ニューヨークのどん底、水俣へのオーディールを映画にしたいと思った。前半は第二次大戦の戦場。後半は20才のアイリーン・スプレイグに観客の心情を託し、彼女の視点で綴る壊れゆくユージン・スミスの最後の大仕事MINAMATA。

創作の夢を膨らませて、ネットでさらなるユージン・スミス関係の情報を漁っているとーーーージョニー・デップが出て来た。



つい二ヶ月前、業界紙のヴァラエティやハリウッド・リポーターが、ユージン・スミスをデップが演ずると報じていた。タイトルはMINAMATA。

実は、山口さんの本を読みながら誰がユージンを演ずるべきかなどと夢想していたときに真っ先に浮かんだのがデップだった。デップだったらやりたがるだろう。デップがアカデミー賞主演男優賞を狙うとしたらこれだろう。そんな想念だ。それ故、不快感はなかった。

ただし、スタッフが若い。監督はデップと同じCAA所属の新進アンドルー・レヴィタス。監督デビュー作の予告編を見たが、映像センス、演出センスに見るべきものはない。脚本のデーヴィッド・ケスラーも若いし、経験値も少ない。唯一の希望は撮影のブノワ・ドゥロムだが、これも一流の光の魔術師とは言いがたい。「欲望のバージニア」などトーンも絵作りも平均以下だった。

当然、テクニカル・アドヴァイザーとしてアイリーン美緒子さんが作品に関わるだろうから、ポイントはそこにある。彼女を納得させる映画になるかどうか。

業界紙の紹介によると、ユージン・スミスが最後の大仕事を求めて水俣へ行く手順が、大幅に簡略化されている。ライフの編集者が、苦境に沈むユージンを見かねて水俣への取材旅行をアレンジする、という流れのようだ。事実はもっと複雑で面白い。数奇な出会いが、ユージン・スミスを日本人の心の奥に導く。コンヴェンショナル・ウィズダムではユージン・スミスの生き様と水俣の苦しみは立ち上がらない。この陣容では、「トランボ」同様、役者はアカデミー賞にノミネートされるが、作品はイマイチのレヴェルで終わってしまうのではないか。



では最後に、本年度見た映画のトップ10。珍しいことに、日本映画が2本も入った。

1 「ペンタゴン・ペーパーズ」
2 「モリーズ・ゲーム」
3 「ファントム・スレッド」
4 「万引き家族」
5 「ベイビー・ドライバー」
6 「グリーン・ブック」
7 「イタリアの父」
8 「ラブレス」
9 「暁に祈れ」
10「カメラを止めるな」

よい年を!


2018/12/31 (月)

イヤーエンドのふわふわ。


去年の年末は「FARGO SEASON 3」のキャリー・クーンとデーヴィッド・シューリスに心ウキウキだった。今年はこのところ次回作のアクション・リハーサルでワクワク。

12/29にはNHKBSでW・ユージン・スミスのドキュメンタリー番組があった。70年代にLAに移り住んだ頃、私は彼の写真に魅せられていた。MINAMATAではなく、その前、第二次大戦の写真だ。

ロバート・キャパも好きだったが、ユージンも好きだった。キャパは映画で描きたいと思い続けているが、ユージン・スミスの生き様を映画の文法で考えてみたことはなかった。名前を借りただけだ。

1977年に息子が産まれたとき、EUGENE遊人と名付けた。サイパン島で彼が撮った二枚の写真を眺めながら、名前を決めた記憶がある。「サイパン島山中でアメリカ兵が見つけた死にゆく赤ん坊」と「前線で水を飲む兵士」だ。



NHKの番組はかなり駆け足のドキュメントだったが、彼の人生のアーチは明快につかめた。元妻アイリーン美緒子スミスさんのインタヴュー場面があり、彼女とユージンの出会いと共闘のすべてを切に知りたくなった。

とりあえず、アマゾンで彼の写真集と「ユージン・スミス/水俣に捧げた写真家の1100日」を購入した。後者は山口由美さんが2013年に上梓した一冊で、第19回小学館ノンフィクション大賞を受賞している。そこに、ユージンとアイリーンのドラマが点描されていた。偉大なる写真家の生き方が活写されている渾身のルポルタージュ文学だ。

読み進めながら、私はユージン・スミスのサイパンから沖縄、ニューヨークのどん底、水俣へのオーディールを映画にしたいと思った。前半は第二次大戦の戦場。後半は20才のアイリーン・スプレイグに観客の心情を託し、彼女の視点で綴る壊れゆくユージン・スミスの最後の大仕事MINAMATA。

創作の夢を膨らませて、ネットでさらなるユージン・スミス関係の情報を漁っているとーーーージョニー・デップが出て来た。



つい二ヶ月前、業界紙のヴァラエティやハリウッド・リポーターが、ユージン・スミスをデップが演ずると報じていた。タイトルはMINAMATA。

実は、山口さんの本を読みながら誰がユージンを演ずるべきかなどと夢想していたときに真っ先に浮かんだのがデップだった。デップだったらやりたがるだろう。デップがアカデミー賞主演男優賞を狙うとしたらこれだろう。そんな想念だ。それ故、不快感はなかった。

ただし、スタッフが若い。監督はデップと同じCAA所属の新進アンドルー・レヴィタス。監督デビュー作の予告編を見たが、映像センス、演出センスに見るべきものはない。脚本のデーヴィッド・ケスラーも若いし、経験値も少ない。唯一の希望は撮影のブノワ・ドゥロムだが、これも一流の光の魔術師とは言いがたい。「欲望のバージニア」などトーンも絵作りも平均以下だった。

当然、テクニカル・アドヴァイザーとしてアイリーン美緒子さんが作品に関わるだろうから、ポイントはそこにある。彼女を納得させる映画になるかどうか。

業界紙の紹介によると、ユージン・スミスが最後の大仕事を求めて水俣へ行く手順が、大幅に簡略化されている。ライフの編集者が、苦境に沈むユージンを見かねて水俣への取材旅行をアレンジする、という流れのようだ。事実はもっと複雑で面白い。数奇な出会いが、ユージン・スミスを日本人の心の奥に導く。コンヴェンショナル・ウィズダムではユージン・スミスの生き様と水俣の苦しみは立ち上がらない。この陣容では、「トランボ」同様、役者はアカデミー賞にノミネートされるが、作品はイマイチのレヴェルで終わってしまうのではないか。



では最後に、本年度見た映画のトップ10。珍しいことに、日本映画が2本も入った。

1 「ペンタゴン・ペーパーズ」
2 「モリーズ・ゲーム」
3 「ファントム・スレッド」
4 「万引き家族」
5 「ベイビー・ドライバー」
6 「グリーン・ブック」
7 「イタリアの父」
8 「ラブレス」
9 「暁に祈れ」
10「カメラを止めるな」

よい年を!


 a-Nikki 1.02